「墨翔展2012」― 震災から1年半、魂の叫び。
今回は、2012年9月25日の活動記録から、埼玉県立近代美術館で開催された「墨翔展2012」を振り返ります。
東日本大震災から1年半という時を経て開いたこの展覧会は、書家としての祈りと覚悟をそのまま形にした場となりました。

埼玉県立近代美術館で開いた書道展「墨翔展2012」
会場の壁一面に、矢部澄翔と眞墨(Masumi)書道会門下生による約130点の作品が並びました。
日々の稽古で積み上げた一点一点が集まると、書という表現の幅広さと奥行きが立ち上がってきます。
その中で、ひときわ異様な迫力で見る者に迫る作品がありました。

魂の叫びとしての一文字「生」
多くの来場者の足を止めたのは、震災直後の恐怖と不安の中で書かれた「生」の一文字でした。
「生きることが当たり前ではない」——生かされていることへの感謝と、命ある限り一生懸命生きるという誓い。
練習など一切せず、その時の感情をそのまま紙に叩きつけた、二度と書くことのできない一発勝負の作品です。

被災地への祈りを込めた作品たち
会場には他にも、震災から1年後に希望を込めて書いた「祈」「復興」、そして亡くなられた方々への鎮魂の思いを込めた「般若心経」を展示しました。
また、実際に被災地を歩き、現地の方々と触れ合う中で生まれた作品「歩きましょう」は、これからも共に歩み続けたいという静かな決意の表れです。

涙を流した来場者と、書家にできること
会期中、仙台から埼玉へ避難生活を余儀なくされていた方が来場され、目に涙を浮かべて「来てよかった」と仰ってくださいました。
人の記憶に残る作品とは、書きたい時に書けるものではないのだと思います。
崖っぷちに立たされた時、自分の意思を超えて生まれてくるもの——書家として出来ることは、ただ墨で表現することだけ。その覚悟が、見る人の心を深く震わせた一週間でした。

作品展・展覧会での書の記録はARTWORKSのページにまとめています。
展覧会・作品制作に関するご依頼・ご相談は、お問い合わせよりお気軽にどうぞ。

